読む台湾茶

高山茶を考える

さて、今号のテーマは「高山茶を考える」です。

そもそも高山茶とは

高山茶とは、産地を示すものではありません。「そこそこ海抜の高い茶園で育った茶葉」という意味です。梨山でも大禹嶺でも茶区名には関係なく、要するに、標高さえ高ければ一応全て高山茶ということになります。

気の存在

では、高山茶の決定的な特徴は何でしょう。それは、高山気(山頭気)です。「気」とは、啜った時や飲み干した時に口に戻る、甘みを含んだ強い清涼感のことです。それは、寒暖差の厳しい環境下で育まれた、茶質が多く繊維が密な茶葉だけが持っている特性です。

この気の強弱で海抜が推測できます。茶葉鑑定の世界でも、中国語で「気が強い/弱い/ある/ない」と表現します。その判定は、正しいお茶をいつも意識して飲んでいる方ならさほど難しくないと思います。

太極拳や東洋医学に関心のある方は、へその下あたりの丹点を意識した呼吸法をご存知でしょう。呼吸に合わせて上下するように感じる「気」が、高山茶のそれに近いイメージです。

あえて海抜で言うなら

その年が標準的な気候であったとすると、台湾北部では文山包種茶が作られる坪林茶区が、高山気の分岐点になります。緯度の低い中南部では、もう数百メートル高い地点が分岐点ということになるのでしょう。

標高600mと800mの文山包種茶を飲み比べてみると、その違いがよく分かります。600m地点のものは口じゅうに戻る清涼感がほとんどない代わりに、良品はストレートな広がるような味わいをもっています。

ちなみに、文山包種茶[04年冬茶]は、気の存在がはっきり感じられるロットです。「高山包種茶」という商品名で出してもいいほどです。(標高で仕入れを決めるわけではありませんが・・・)

こうして考えると、天候という変動要因が存在する限り、海抜何mで高山茶と平地茶を線引きするかという議論は、意味がないように思います。

包装場の不思議

昨年、楊さんの製茶場の近所にある包装場を訪ねました。多くの茶農家は自分で包装設備を持たないため、仕上がった茶葉を包装場に持ち込んで、150gや300gの真空パックにしてもらいます。

包装場で売っている茶袋や化粧箱は数百種に及びますが、その約7割が「高山茶」と印刷されています。価格は茶袋13円、化粧箱25円から。付近の標高は約300m。不自然だと思いませんか。

包装場の入り口。ラミネートの機械が見えます。

茶袋もほとんど「高山茶」です。

阿里山高山茶は高山茶か

嘉義駅から登山鉄道ではなく、バスで阿里山に向かってみましょう。すると沿道に広がる阿里山高山茶区は、かなり低海抜から始まっていることがわかります。調べると、同茶区内の標高差は1000mにも及ぶそうです。標高600mの茶葉は、高山茶と呼んでよいのでしょうか。

高山茶ブランド

「高山茶だから高級だ」という茶商が台湾にも日本にもいます。しかし本当は、標高が高い茶区はお茶作りの歴史が浅いので、全般的にみると低海抜の茶師の方が高い技術を持っています。凍頂茶区と阿里山高山茶区を比べると、前者の製茶技術が高いのは明白です。

高山茶区の茶葉は生長速度が遅く、茶葉の大きさや繊維質が揃いやすいので、茶師にとって製茶しやすいのは確かです。つまり高山茶は天性条件が有利なのです。しかしこれは机上の理論に過ぎず、良いお茶は天・人・地の三要素が整った時にしか作られません。

また、有名農場のお茶が高いのは、ブランド力です。私も直接購入したことがありますが、価格相応の品質かと問われれば疑問符がつきます。ちなみに、農場を管轄する「行政院国軍退除役官兵輔導委員会」とは、蒋経国(蒋介石の息子)が政治目的で設置した退役軍人の再就職斡旋機関に過ぎません。

本物を手にするために

外国産を含む他茶区で作られた茶葉を「境外茶」といいます。特にここ数年、台湾メディアをウォッチしてると境外茶摘発のニュースが後を絶ちません。こと高山茶に関しては、高山茶=高級茶というブランドイメージが強く、本物は製茶量が少なく高価なため、かなりの確率で境外茶や粗悪品を掴まされます。

そういえば、以前に台北の有名茶荘の「高山茶」を買い集め、茶業関係者を交えて試飲したことがあります。その結果、およそ高山茶とは思えないサンプルがいくつもあったことは驚きました。関係者の話では、茶荘に悪意があるわけではなく、取引先から与えられた情報を鵜呑みにして仕入れてるだけなんだそうです。

正しい茶葉を手にするには、正しい知識をもって臨むほかなさそうです。

参考資料:『阿里山高山茶有冒牌貨 越南茶混充 真假難辨』

聯合新聞網、2004年12月5日号 ほか

メルマガ 2005/1/12号より

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