読む台湾茶

泡茶三要素① 茶葉の量

2021/2/5 更新

台湾茶を美味しく淹れるコツをお教えしましょう。

キーワードは泡茶三要素です。

泡茶三要素とは台湾茶を操るための3つの基本軸です。①茶葉の量、②温度、③時間で構成され、これらを上手にコントロールできるようになるとお茶淹れは上達します。

今回は①茶葉の量をご紹介します。

初心者がつまづきやすいポイントですので丁寧に解説します。最後までお付き合いください。

なぜ茶葉の量を決めるのは難しい?

台湾の茶藝館に行けば、趣のあるティーセットを使って、これくらいの茶葉を入れてお湯を注いでと店員が手ほどきしてくれます。でも自宅ではそうはいきません。使う茶道具も違うでしょうし、茶葉の加減も思い出せません。

茶葉の量を決める、たったそれだけなのに、慣れないうちは難しく感じてしまいます。その理由を3つの観点から検討してみます。

①台湾茶には球形と條形がある

台湾茶の形状は大きく2タイプあります。球形と條形です。下の画像はそれぞれ3gを計量したものです。球形と條形では、かさが全く違います。

レンゲに乗せてみます。

球形の中でも、ずっしり重量感を感じる茶葉もあれば、ふわっとした茶葉もあります。そのため、手の感覚はあまり頼りになりません。スプーン山盛り1杯と決めていても、よくよく計量してみると、茶葉によっては3gに満たなかったり6gを超えることもあります。

②膨らみやすい茶葉と膨らみにくい茶葉がある

台湾茶はお湯を注ぐと何倍にも膨れ上がります。普段日本茶や紅茶を飲んでいる方にとっては、その膨れ具合たるや、想像を絶することでしょう。

よく観察すると、同じ球形でも、種類によって膨らみ具合が違ってきます。一般に中海抜・低海抜の茶葉は膨れやすいです。茶葉に厚みとコシがあるため、上方向に押し上げる力が大きくなります。

一方、良質な高山茶は繊維が柔らかくしなやかです。ゴワゴワと膨れ上がることはありません。

③茶器の大きさ、形が様々

茶器の中には茶葉が広がるための適度な空間が必要です。中国茶用の茶壺は一般にまるっとしていて、茶葉が広がりやすい作りになっています。

日本茶用の急須は横広のものが多くあります。これに中国茶でよく言われる「茶葉は茶器の底が隠れるくらいが適量」をそのまま当てはめると、茶葉を多く入れてしまいがちです。

ちなみに、急須にセットした茶こしで空間が狭められる場合は、茶こしを外して使いましょう。

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茶葉も様々、茶器も様々。「適量」って案外難しいのです。

次の項では、茶葉が多すぎるとどうなるか、少なすぎるとどうなるか。それぞれ検討していきます。

茶葉の量が多すぎると?

①茶葉が開かない

初めて淹れる茶葉は、どのように味が出て、どれくらい膨らむかが読めません。初めての茶器も使うような時も、茶葉の量を決めるのは難しいです。これは上級者も同意見でしょう。

茶葉が多いと、茶器の中で茶葉がのびのび開いてくれません。抽出も中途半端になって、せっかくの茶葉のポテンシャルを発揮できなくなります。

応急策としては、途中からでも構わないので、もう一つ茶器を用意して茶葉を分けてあげましょう。

②お湯が浸透していかない

茶器の中が茶葉でぎゅうぎゅうに膨らむと、お湯が入りにくくなります。

この時、上部の茶葉ばかりに熱湯がかかるため下部の茶葉の抽出が進みにくくなります。その結果、抽出にムラができ、メリハリのない味になります。

想像してみてください。上部の茶葉は10煎目の味、下部の茶葉は3煎目の味、それらをミックスしたらどうでしょう。あまり美味しそうではありませんね。

③高温を維持できない

一部の例外を除いて、台湾茶の抽出には安定した高い温度が必要です。茶葉が多いと、お湯の熱が茶葉に奪われて、茶器内の温度がみるみる下がってしまいます。これでは美味しい成分を引き出せません。

温度が下がらないうちに次々と抽出を重ねるのも手ですが、それでは1煎1煎を楽しむ余裕がなくなってしまいます。

台湾茶のパフォーマンスで、お湯を注いだ後に蓋を閉じて、その上からお湯をかける光景を見たことありませんか?これは温度維持の観点からも意味のある所作なのです。

台湾よりも涼しい日本では、温度管理は特に大切なポイントです。

以上3点、茶葉が多すぎることのデメリットをご紹介しました。では続いて、茶葉が少なすぎるとどんな影響が考えられるのでしょうか。

茶葉の量が少なすぎると?

①味がブレる

球形の茶葉はコロコロと美しく、1粒も大きいです。お湯を注いで完全な1片の葉っぱに戻っていく姿は永遠と眺めていたくなります。

とはいえ、いつも茶葉1粒だけで淹れる人はいませんね。

3gであれば10~20粒くらいでしょうか。台湾茶の味わいはこれらの集合体として形成されます。複数の茶葉が集まることで、味わいに複雑味が増します。

つまり、茶葉が少ないと生じる影響の1つ目は、抽出が定まらず「いつも同じ味」を再現しにくくなることです。

②多重抽出の良さが発揮できない

多重抽出とは5回10回と煎を重ねていく抽出法です。

台湾茶は多重抽出に適しています。それを考慮して、台湾茶の茶器は一般に小さくできています。

茶葉が少ないと1煎あたりの茶葉への負荷が大きくなります。そして煎が続きません。台湾茶の魅力である、味の移ろいが存分に楽しめなくなります。

10煎目くらいまでは1煎ごとに異なる魅力が楽しめるよう、はじめから茶葉の量を加減しましょう。

ちなみにインドやスリランカの多くの紅茶は、1煎で全ての美味しい成分を抽出しきるように製造されています。そのため、紅茶は1煎でしっかり出し切って、濃かったらお湯を差すほうがよいと言われています。

紅茶と台湾茶では楽しみ方が違います。興味深いですね。

③時間がかかりすぎて場が持たない

台湾茶の抽出時間は1煎目を基準にして、2煎目は短く、3煎目以降はだんだん時間を伸ばしていきます。10煎目なら2分が目安でしょうか。

でも、茶葉が少ないと10分かかるかもしれません。

一人でのティータイムであれば、10分なんて読書したり茶葉の紹介ページを読んでいるうちに過ぎてしまう時間かもしれません。

では、誰かと一緒に台湾茶を楽しむ場合はどうでしょう。トークに自信があればうまく間をつなげるのでしょうが、私は無理です。時間がかかりすぎると、相手の意識がお茶からそれやすくなることも一応想定しておきましょう。

もっとも長時間抽出は味にも影響が及びます。抽出中に温度が下がると抽出効率が落ちるばかりでなく、味もブレます。

10分待って色は出たけど味はスカスカ。これでは相手もがっかりです。

イラストで見る 正しい茶葉の量

ここまで読んで「茶葉の量の正解はあってないようなもの」と感じませんか?

その通りです! 単純に何グラムとは言えないのです。

とはいえ目安くらいは知っておきたいものですね。イラストをご覧ください。

中国茶用の茶壺は5煎目で茶葉が蓋に届くよう目指しましょう。先にお話したとおり、茶葉の種類によっても膨らみ方は異なります。

なお、茶器が大きいほど、5煎淹れたときの茶葉の適正位置は下がります。例えば、紅茶用のティーポットですと5煎目で茶葉がポットの半分まで膨らむくらいが目安です。

蓋碗は、球形も條形も5煎目で蓋を立てて茶葉を押すとやさしく反発するくらいが適量です。

下の画像は球形の凍頂烏龍茶~清香です。これを目標にしましょう。

安定抽出をマスターしよう

今回は泡茶三要素のうち①茶葉の量についてお話しました。

お茶淹れの極意は泡茶三要素をいかに柔軟に操るかに尽きます。今日からちょっと意識してみてください。

②お湯の温度、③時間はまたの機会にお話します。

では、素敵なティータイムを!

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