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楊さんの台湾有機茶系列

市場には自称有機茶が多く流通していますが、正々堂々と有機茶を名乗るには第三者機関による認証が欠かせません。

認証機関の一つである1990年に発足したMOAの理念を紹介します。有機栽培の目的として、人間を含む生命体の安全と永続的農業を掲げています。

MOA自然農法執行基準(台灣版)(1996年)

自然農法の理念は大自然の法則にのっとり、土壌を尊重することを基本とし生態系を維持、保護し、人類及び全ての生命体の調和と繁栄を達する。MOA自然農法は経済発展を追求するのではなく、地球及び土壌はすべて生きていて、それらによって作られた農作物も生命体である。人類はこれらの生命力の充満した農作物を口にすることによって本当の意味での健康を得ることができる。自然農法の最大の目標は地球上の全ての生命体の安全を確保することにある。(日本語訳:店主)

有機茶認証を得るまでの流れ

まず認証期間による微量元素の土壌検査が行われます。それが基準範囲内であれば自然農法への転換期が始まります。期間中は認証期間の指導の下、決められた有機肥料を使い、農薬・除草剤を使用せず、病害虫の駆除には天敵を導入するなど、土地管理から摘茶・加工・包装・保存・流通に至るまで一切が認証機関の管理下におかれます。

移行段階の初期では茶園の生態系維持が非常に困難で、想像以上の労力を強いられます。化学肥料と化学的に作られた農薬さえ散布しなければ簡単に認証がとれると軽い気持ちで始めた茶農は、この間に続々と脱落していきます。

そして、7年もの歳月を経てようやく全有機の合格証を手にすることができるのです。その後も抜き打ち検査が適宜行われ、不正が発覚すると認証剥奪となり一切の苦労が水の泡と化します。今年は農薬も化学肥料も除草剤も使わなかったから有機茶だとどんなに主張しても、それが自称有機茶では信用は得られないのです。

有機栽培の基礎知識

有機栽培における土壌改良と地力増進のポイント
  • マメ科植物などの地力維持作物との混作の推進、輪作の推進
  • 有機資材利用時に養分過多を避け、根部傷害や病害虫の抑制に努める
使用可能な土壌改良及び養分供給資材
  • 自然界に存在する植物やそれから精製された堆肥
  • 安全性が確認された客土土壌(自然に存在するもののみ)
  • 作物残渣及びそれでできた堆肥
  • 木炭及び燻炭
  • 油かすなどの植物性かす類
  • 米ぬか
  • 魚かす
  • 骨粉
  • 草木灰
  • 重金属を含まない家畜排泄物で作った完熟堆肥
農薬不使用の有機栽培における病害虫防除法
  • ハチ類、微生物などの天敵導入
  • 共栄植物、忌避植物の同時栽培
  • 性フェロモンと粘着トラップを組み合わせて誘殺
  • 食品(酢、牛乳、酒類、砂糖、小麦粉、香辛料など)
  • 草木灰
  • 殺虫成分を含まない石鹸
  • 害虫産卵期の整枝
雑草抑制の耕作方式
  • 輪作(周期的に異なる作物を栽培し土壌養分バランス保持)
  • 間作(畝と畝の間にマメ科などの地力保持作物を栽培)
  • 中耕(雑草の生え始めに土を掘り起こし根を絶つ)
有機茶の主な特長
  • 香りが力強い
  • 茶葉が肉厚で旨みが深い
  • 刺激感がなくのど越しが良い
  • 淹れられる回数が多く経済的
  • 時間の経過に伴う品質劣化が少ない
有機茶栽培のデメリット
  • 人件費がかさむため良品の価格が高い
  • 特に転換期初期の茶園で生態系維持が困難で収量や品質が不安定
  • 茶葉の外見が冴えないものも少なくない
  • 偽造シールや自称有機茶の流通による利潤の横取りが絶えない
  • 真面目に土壌保全に立ち向かう有機農家への保障制度が十分とはいえない

楊さんの茶園

楊さんの茶園では、畝間にマメ科のクローバーを植えて土壌通気性の向上、水分保持能力の向上、根粒菌による窒素固定を促しています。ある程度生長したところですきこめば緑肥としても活用できます。

畑全体が豊かな生態系

翠玉の茶花

四季春の高級品種、紅心種

お茶のデータ
商品名称 台湾有機茶系列
たいわんゆうきちゃけいれつ
生産地 南投縣名間郷
生産者・製茶師 楊懷珣さん
行政院農委會輔導【業者為87、88、89年有機栽培示範農戸】
MOA(財)国際美育自然生態基金會自然農法認定農家(全有機)
TOPA有機農産品合格證字茶第030號
茶樹の品種 翠玉、四季春(紅心種) *機械摘
摘茶時期 2012年春茶:3月下旬
2011年冬茶:10月中旬
2011年春茶:4月上旬
2010年冬茶:11月上旬(翠玉)、10月下旬(四季春)
茶園の海抜 300m
発酵度 軽~中発酵
烘焙程度 軽~中焙火 *2011年春の四季春は無焙煎(生茶)
推奨茶器 磁器または陶土製の茶壺・急須、蓋碗、マグカップ
茶葉の分量 茶壺・急須・蓋碗→5分の1弱
マグカップ→底が軽く隠れる程度
お湯の温度 98℃前後
時間の目安
(95℃)
茶壺、急須→40秒
蓋碗、マグカップ→蓋をして50秒
(2煎目-15秒、以降+10秒ずつ)
茶葉は通常より少なめにして、滋味を出し切るまで何煎も愉しんでください。マグカップに少量とって、お湯を継ぎ足しながらいただくのもおすすめです。

病害虫対策としては、畝間の雑草の高さを抑えて通気を促進させたり、古枝を手作業で取り除いたり、手で葉についた卵などを払い落としています。私と雑談に花を咲かせながらも、決してその手を休めることはありません。

チャは強酸性土壌を好む植物なのですが、油かす(ゴマ)、小豆かす、鶏糞など完熟有機質肥料を施肥して地力を高めるともに、適量の草木灰でpHをやや高めに矯正しています。化学肥料を施肥したチャより生長は遅くなり収量も落ちますが、自生力が強く栄養分を蓄えた肉厚の茶葉が作られ、何煎も淹れられるお茶が作られるのです。ぜひ10煎以上は愉しんでください。

チャ栽培のプロは決まって土作りのプロでもあります。透水性・通気性・保水性を高めるため手作業で深耕し、礫を取り除き根域をほぐして土壌団粒化を図り、土壌三相(固体、液体、気体比)を調整するだけで5年もの歳月を費やしました。

手入れの行き届いた土壌は有機質に富み柔らかく、触れると強い生命力を感じます。良質な土壌が張りの強い根を生み、その根が地上部の活動をしっかりサポートします。

手塩にかけて育てあげた土、茶園、そして有機茶。茶業改良場へ半年通い、その後15年間に渡る独自の研究を経て、MOA最高認証“全有機”を取得しました。

0.5haしかない茶園だから、環境保全、有機農法、そして台湾茶に理解のある人としか商売しない

楊さんはこう明言します。楊さんとの半年以上に渡る対話の末、今ようやく販売にいたりました。

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