読む台湾茶

東方美人を摘茶時期で飲みくらべ

2019/1/19 更新

東方美人はどの品種からも作ることができます。先行して出回る金萱や翠玉などの新品種は、生育旺盛ゆえ、茶葉の滋味密度が高くないのです。また青心烏龍のような柔らかな舌触りとピュアな蜜香も持っていません。新茶として飲む分には悪くはないのですが、年単位の熟成をたのしむ東方美人としてはポテンシャル不足です。とはいえ低価格の"東方美人風"は、市場での需要は大きいのです。新品種のお陰で一定の量と品質が保たれているのも事実です。

農家はなぜ新品種を導入するのか?

理由は主に2点あります。
一つ目は摘茶周期の違い。品種によって生育周期が異なるため、多品種栽培することで摘茶や製茶の一極集中を避ける狙いがあります。特に手摘茶は、ベストタイミングで労働力が確保できないとなると死活問題です。もう一つはリスク管理の観点。病気などが発生した際、異なる遺伝子を持つ品種を栽培することで、全滅を避ける目的です。農業に携わる方であれば、多様性の大切さをよく認識されていると思います。

2013年から2018年まで、ずらりと並べてテイスティングしました
東方美人、2013年〜2018年の茶葉をくらべる
  • 2018年の新芽は、繊細であった2017年よりも一回り小さく繊細です。
  • 白芽の比率は高めで、水色は2017年の琥珀色に似ています。
  • マスカット的なみずみずしさと発酵烏龍茶の奥ゆかしさが絡み合って、東方美人の滋味を形成しています。
  • 今は新茶らしいシャープな味わいが前面に出ており、入口時の甘味はしっかり主張してきます。
  • 中低温に向かうにつれて蜜甜味が顔を覗かせてきます。
  • 滋味はたいへん充実しており、キメも細かいので、熟成への期待が大きく膨らみます。 新茶にしかないミント香を堪能したら、常温で熟成させましょう。
  • 熟成につれて、厚みのある滋味が甘味へと転化していきます。
  • 湯面はだんだんと丸みを帯び、とろっとした舌触りが醸成されます。
  • 後味の甘さが確実に強まっていきます。
時間によって醸し出される熟果香

水蜜桃に例えられる東方美人の熟果香は、製茶技術で作り出すものではありません。時間によって醸し出されるものです。新茶も熟成過程も愉しめるのが台湾茶、こと東方美人の魅力です。

今年も熟成条件が整った東方美人を確保できました。あとは皆さんのお手許で、ビンテージワインや年代物のウイスキーの如く、陳味の醸成を見守ってください。良いお茶は、5年後でも10年後でも美味しくいただけます。

東方美人は新旧の飲みくらべがおすすめ

東方美人は新旧の飲みくらべがおすすめです。時間とともに茶葉の色味が均質化し、濃密な熟果香が生まれます。まろ味が格段に強調されます。

2017年はまだ新茶の余韻が前面に出てきますが、後味には確かな甘さとコクが伺えます。2016年はニュートラル。2015年以前のものは、とろっとした円熟味が年々強まっていきます。2013年に至っては、花蜜をすすっている錯覚に陥るほど特徴的な甘みの転化が感じられます。台湾茶を正しく選定できたかどうかは、こうして数年経って初めて分かるのです。飲みくらべの第一歩は2013年と2018年がおすすめです。

最後の1煎を飲んだら・・・

お湯が沸いたら火を止め、一呼吸おいてから淹れましょう。甘さを引き出しやすくなります。最後の1煎を飲んだら水を張っておきましょう。翌朝、極上の水出し東方美人が目覚めの1杯となります。

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