ぶんさんほうしゅちゃ・すいぎょく ~ぎょくらんか~

文山包種茶・翠玉~玉蘭花~

とっておきの文山包種茶をご紹介します。

玉蘭花を思わせるエキゾチックな味わいがする、11年熟成の台湾茶です。

店主のコメント

11年間の時を感じさせない、いきいきとした潤いのある茶液です。舌触りは柔らかく、フルーツピューレのような凝縮した花香が口いっぱいに広がります。余韻はシトラス調で、新茶よりも落ち着きを持っていて長く続きます。
昭和にタイムスリップしたように懐かしい味わいで、温かみのあるジャスミン香とほんのり老茶の包容感が魅力です。1年の締めくくりに飲むと郷愁に誘われ、新年のはじめに飲むと気持ちを一新できます。(2023年12月16日発売→12月18日完売)

完売しました

ジャスミン香る「翠玉」/"11年もの"解禁

「翠玉」という品種を知っていますか?
1981年、茶業改良場から華々しくデビューを遂げた改良種です。

翠玉の香りは特徴的で、台湾ではワイルドジャスミン(野姜花)に例えられます。日本人的にはマダガスカルジャスミンのほうが馴染み深いでしょうか。上品なジャスミンの香りに、玉蘭花を思わせる南国のアクセントが加わったエキゾチックな雰囲気です。

台湾の茶業関係者の間では、日本人は翠玉が好きだと考えている人が多いです。なぜなら、日本人は透明感のある香気を好むという共通認識があるからです。


●"農家泣かせ"の貴重品種

2000年頃までは、翠玉は各地で栽培されていました。ところが、現在は栽培面積が年々減少しています。

翠玉は気難しい品種で、茶農家さん泣かせなのです。気温が高いとすぐ過発酵になってしまい、翠玉の持ち味であるワイルドジャスミン香が、キレのないやぼったい香りになってしまいます。

しかも、2000年以降の台湾茶のトレンドは「蜜のような甘み」や「緻密な味わい」ですから、どんなに素晴らしい個性を持った品種であろうが、トレンドと異なる翠玉を、高いリスクを抱えてまで育てようとする茶農家さんは多くないのです。

翠玉と同年にデビューした「金萱」のように、栽培適性が広く、密植できて経済価値が高い他品種へのシフトがますます加速しています。

そのため、近年は翠玉に出会えること自体が多くないですし、その中で良品を見つけるのはとても難しいのです。


●「2012年産」の翠玉が、いま手元に

店主の手元には色々なお茶があります。
めったに出会えない素晴らしいロットを入手すると、その一部を残すようにしています。

そして、経年観察により、お茶がどのように熟成していくのかを見守っていきます。

・どれくらい寝かせると美味しさのピークに達するか
・焙煎によって魅力を高められるロットかどうか
・焙煎をするならどのタイミングがいいか
これらを見計らっていきます。

2012年の春から寝かせている「翠玉」が、ここにあります。

入荷から1年で、改良種特有の初々しさはすっかり落ち着きました。

その後、5年間くらいは期待したほどの大きな変化はなかったのですが、それからしばらくして、だんだんと香りにクリーミーな甘みを帯びるようになってきました。

ここ数年は、「陳味」という老茶が持っているウッディな風合いがかすかに芽生え、陳味とジャスミンの濃密な甘さが交わって新茶にはない独特の個性が伺えるようになりました。

この秋から、これから数年間の飲み頃の入り口に差し掛かってきました。

私はこのタイミングで最終焙煎をして、熟成の進行を止めることを検討しました。今の美味しさを最高の状態で閉じ込めて、何十年先までも楽しんでいたい、そう考えたのです。

しかし、今年11月に台湾に赴いて焙煎師と議論した結果、焙煎はしないほうが良いという結論にたどり着きました。その理由は、老茶の風合いと熟成した花香との一体感は、確かにこれから数年間がピークであるが、ここで焙煎すると両者のバランスが傾いて花香の厚みのある甘みが感じにくくなってしまうと判断したからです。


●郷愁を誘う、老茶の包容力。ぜひご賞味を

11年間の時を感じさせない、いきいきとした潤いのある茶液です。

舌触りは柔らかく、フルーツピューレのような凝縮した花香が口いっぱいに広がります。余韻はシトラス調で、新茶よりも落ち着きを持っていて長く続きます。

現在のトレンドである高山茶は、言うならば「洗練さの極み」。大吟醸酒のようにクリーンな味をとことん追求しています。

一方、この翠玉は、昭和にタイムスリップしたように懐かしい味わいで、温かみのあるジャスミン香とほんのり老茶の包容感が魅力です。私はこの翠玉を口に含むたびに、留学時代の思い出が頭の中に蘇ってきます。

1年の締めくくりに飲むと郷愁に誘われ、新年のはじめに飲むと気持ちを一新できます。

そう、1年の中でも、年末年始が最もおすすめのタイミングです。

店主は、こういうほっとするタイプのお茶が好きなんです。

お茶のデータ
商品名称 文山包種茶・翠玉~玉蘭花~
ぶんさんほうしゅちゃ・すいぎょく ~ぎょくらんか~
生産地 台北縣坪林郷
茶樹の品種 翠玉
摘茶時期 2012年4月下旬
茶園の海抜 650m
発酵度 軽発酵(10~13%)
烘焙程度 加強乾燥のみ
推奨茶器 磁器製の茶壺・急須、蓋碗、マグカップ、グラス
茶葉の分量 茶壺・急須・蓋碗 → 4分の1弱
マグカップ、グラス → スプーン1杯
お湯の温度 85~95℃、冷水
時間の目安
(95℃)
茶壺、急須 → 40秒
蓋碗、マグカップ、グラス → 蓋をして40秒
(2煎目 -10秒、以降 +20秒ずつ)
文山包種茶・翠玉 ~玉蘭花~の3つの楽しみ方

95℃の湯で淹れる 
→ 香りがじっくり楽しめます。茶器を充分温めてから、沸かしたてのお湯をゆっくり回しかけ、蓋をして蒸らします。

少し冷ました湯で淹れる 
→ 優雅な旨みを引き出すことができます。ふくよかな後味が口中を包み込みこみます。アフタヌーンティーに最適です。

水で淹れる 
→ 9分目まで水を入れた500mlペットボトルに大さじ1杯の茶葉を入れ、軽く茶葉をなじませます。そのまま2時間静置して完成。半分飲んだら水を足し、茶葉が完全に開くまで数回楽しめます。

ワンポイントアドバイス

夏場は、淹れた後の茶壺・蓋碗の蓋をあけて放熱しましょう。次の一煎もクリーンな美味しさが楽しめます。中国茶道の知識です。