とくせん ぶんざんほうしゅちゃ~すみびばいせん

【特撰】文山包種茶~炭火焙煎

お盆が明けて、お茶の好みが変わった気がしませんか?

さっぱりしたお茶から、だんだんと奥行きのある味わいを欲する季節です。味覚にも意識が向かいやすくなります。

夏の疲れを忘れさせようと、心と体が秋を先取りしているかのようです。

今季の特別商品、炭火焙煎茶をご賞味ください。

店主のコメント

茶湯は明るくきれいな茶色です。口に含むと、想像をはるかに超えるボリュームの旨みが押し寄せます。甘さはジャムのようにギュッと詰まっています。舌触りはやらわかく、冷めるほどにとろみが増します。余韻が長く、何煎までも後を引く美味しさです。晩夏~秋のリラックスタイムに最適です。

完売しました

炭火焙煎は儲からない。それでも作り続ける理由があります。


●活性と余韻と回甘と

炭火焙煎の文山包種茶って初耳ですか?

どんなお茶かをお話する前に、まずは新茶と焙煎茶では楽しみ方が違う点を押さえておきましょう。

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気温がぐんぐん上がっていく6月から7月は新茶が好まれます。

新茶の味わいはみずみずしく、輪郭があります。

メリハリのきいた新茶の味わいを、中国語で「活性がある」と言います。

新茶や軽焙煎のお茶は活性が豊かで、心をスカッとさせてくれます。

一言でいうと、夏向きです。

春茶やジャスミン茶、明前碧螺春でこの夏を乗り切った方も多いでしょう。

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焙煎茶は新茶にはない魅力を持っています。

新茶のいきいきした活性に対し、焙煎茶は「余韻」と「回甘」が優れています。

「余韻」とは、飲み干した後に口内に残る旨みの滞留です。良い焙煎茶は余韻が長いです。

「回甘」とは、余韻の引き際に一盛り上がりするお茶由来の甘さです。

つまり焙煎茶は美味しさの波が2度3度とやってきます。

お茶に意識を向けて飲んだら小さな茶杯の一口がコップ1杯のように感じた、という人が時々います。

ボリュームが大きく感じるのは正しい感覚です。秋口から冬にかけてよくある体験です。

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まとめると、季節が夏に向かうときは新茶、冬に向かうときは焙煎茶と知っておきましょう。特に季節の変わり目は、新茶と焙煎茶の良さが最も感じられるタイミングです。


●炭火焙煎は不人気?

続いて炭火焙煎のお話です。

炭火焙煎と聞くと、達人の奥義のように思われがちですね。

缶コーヒーのCMの見すぎでしょうか笑

実際のところ、炭火焙煎の台湾茶はほとんど出回っていません。

なぜなら焙煎師が嫌がるからです。

消費者には人気、でも焙煎師には不人気。

どういうことでしょう?


●2つの焙煎方法-機械焙煎

焙煎には主に2つの方法があります。

機械焙煎と炭火焙煎です。

それぞれの特徴を知ると、なぜ焙煎師が炭火焙煎を避けたがるのかが理解できます。

機械焙煎は焙煎機(オーブン)を使います。庫内は密閉空間のため外気の影響を受けません。季節に関わらず、庫内の温度・湿度をいかようにも制御できます。

機械焙煎の最大のメリットは何でしょう。それは、データの回収、分析を重ねて焙煎技術の向上が期待できることです。


●2つの焙煎方法-炭火焙煎

一方、炭火焙煎はどうでしょう。

意外かもしれませんが、炭火焙煎の熱源は火そのものではありません。火を消した灰の熱気を使います。

焙煎師は焙煎小屋全体をひとつの大空間と捉え、空気の対流を読みます。そして、刻一刻と変動する気温・湿度に合わせて終始室内を動き回りまわります。

すきま風を細かく調整したり、かごを移動したり、茶葉を撹拌したり積んだり薄く広げたり、茶葉の上下を返したり。

機械焙煎との違いは何でしょう。それは、炭火焙煎は茶葉が外気に触れながら加熱されるため、焙煎中にも酸化が進む点です。

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私が初めて炭火焙煎に立ち会ったのは2005年頃です。

まだ台湾茶に詳しくなかった私は、焙煎師が次々と意表をついた行動をとるのを見てコミカルに感じたのをよく覚えています。

炭火焙煎は人並みはずれた集中力と体力が必要です。焦げたら全てが水の泡。機械焙煎よりも制御が難しいのは想像に難くありません。

そうなんです。

炭火焙煎は骨が折れるばかりでリスクが大きすぎるのです。

焙煎師に人気がないのもうなずけます。


●炭火焙煎は儲からない

炭火焙煎茶は焙煎師一人では少量しか作れません。

そのためなかなか流通に乗らず、大々的に売られることもありません。

現代の炭火焙煎とは、普段は機械焙煎に精を出している焙煎師が、炭火焙煎のメリット・デメリットを熟知して、周到に準備をした上でたまにチャレンジするものです。

商業ベースではとても割に合いません。


●炭火焙煎の味わいは?

それでも炭火焙煎に挑む価値はあると焙煎師は言います。

炭火焙煎が正しく施されると「個性のある活性」が目を覚まします。

炭火には炭火特有の香りがあります。熟したアンズのようなコーヒーのような、機械焙煎にはない複合的な香りを持っています。

しかも、炭火焙煎はこの風味が何年も何十年も続きます。


●テイスティングレポート

まずは素晴らしく良質な文山包種茶をセレクトします。

品種は青心烏龍。発酵度があり優雅な花香。

しっかり寝かせ、活性が落ち着くのを待ってから炭火焙煎を施しました。

画像をご覧ください。茶湯は明るくきれいな茶色です。

口に含むと、想像をはるかに超えるボリュームの旨みが押し寄せます。

甘さはジャムのようにギュッと詰まっています。

舌触りはやらわかく、冷めるほどにとろみが増します。

余韻が長く、何煎までも後を引く美味しさです。

晩夏~秋のリラックスタイムには最適です。

熟成につれて味わいの後半部分のふくらみが大きくなります。

今1袋、そしてもう1袋は忘れた頃に開けるくらいの気でもいいかと思います。

常温未開封で長期保存できます。


●過去の炭火焙煎とはどう違う?

2009年の古早南港包種茶(完売)と比べてみました。

今回入荷したロットは標高が高く、文山包種茶の透明な味わいが焙煎後も楽しめます。焙煎から3ヶ月ですでに飲み頃です。

2008年の文山包種茶~水仙SP(完売)とは品種違いです。

今回のものは青心烏龍の凝縮味と、水仙よりも複雑味のある花香が楽しめます。王者・青心烏龍の力を感じます。

お手元にある方は飲みくらべてみてください。

余談ですが、2000年初頭の台湾茶ブームの頃は、ひどい炭火焙煎茶がたくさん出回っていました。

焼きムラの激しいもの、燻製のように火味がついたもの、炭化して黒光りした茶葉が飛ぶように売れていた時代があったのです。今となっては笑い話ですが・・・


●茶會講話とは

焙煎師は常々言います。

お茶が発するあらゆる情報に全神経を集中せよ。どう火を入れるか、いつまで寝かせるかはお茶が教えてくれる。

半ば精神論のような響きですが、なんとも奥深い一言だと思いせんか。

私はこの言葉をいつも心に刻んでいます。

炭火焙煎茶は6年ぶりのご案内です。

私は今は文字で台湾茶の魅力をお伝えすることしかできません。

どうか焙煎師の情熱を受け止めてください。

お茶のデータ
商品名称 【特撰】文山包種茶~炭火焙煎
とくせん ぶんざんほうしゅちゃ~すみびばいせん
生産地 台北縣坪林郷
茶樹の品種 青心烏龍
摘茶時期 2021年春茶:2021年4月中旬
茶園の海抜 600m
発酵度 中発酵(花香)
烘焙程度 中焙煎
推奨茶器 磁器製の茶壺・急須、蓋碗、マグカップ
茶葉の分量 茶壺・急須・蓋碗 → 4分の1弱
マグカップ、グラス → スプーン1杯
お湯の温度 95℃
時間の目安
(95℃)
茶壺、急須 → 40秒
蓋碗、マグカップ、グラス → 蓋をして40秒
(2煎目 -10秒、以降 +20秒ずつ)
文山包種茶の3つの楽しみ方

95℃の湯で淹れる 
→ 茶器を充分温めてから、沸かしたてのお湯をゆっくり回しかけ、蓋をして蒸らします。

少し冷ました湯で淹れる 
→ 優雅な旨みを引き出すことができます。ふくよかな後味が口中を包み込みこみます。アフタヌーンティーに最適です。

ワンポイントアドバイス

磁器の蓋碗はいかがでしょう。ふたの裏から昇る、文山包種茶のきれいな香りをお楽しみください。