もくさくせいそうてつかんのん・じーずくんかこう
木柵正欉鐵観音・橘子薫花香
橘子花(みかん)のつぼみが、最高級の木柵正欉鐵観音と出逢いました。鑑定のポイントは、花の香りと茶葉の滋味それぞれが素晴らしく、かつ適度に融合していることです。衝撃の出合いが、過去に3回だけありました。
作り方はジャスミン茶に似ていますが、橘子花の香り付けは桁違いの手間がかかります。リスクも大きくなります。それでも果敢にチャレンジを続ける作り手がいることに感謝します。
店主のコメント
手作業で約20回、良質な木柵正欉鐵観音に花の香りを移しました。飲み口は東方美人のように柔らかでありながら、確かな滋味を感じます。何十煎もお楽しみください。現品限り。
神秘のマリアージュ。
芳しい蜜柑と最上級の鐵観音が、20回も出会いました。
鉄観音種は厚みがあり、花の香りを茶葉へ浸透させるのが極めて困難です。また、4月の清明節ごろに咲く橘子花は、ジャスミンと違って少量しか収穫できません。雨に当たった蜜柑のつぼみは使えませんので、作れる年も限られます。
薫花回数は約20回。木柵正欉鐵観音は最高レベルの冬茶が必要です。
まずは茶葉を半年間熟成させます。後発酵を促すことで木柵正欉鐵観音は安定を増し、20回もの薫香で傷むことなく茶葉内部まで香りを浸透させることができます。茶葉の旨みと橘子花の香りの融合は10煎目でもしっかり楽しめます。
まじめに着香茶を作ろうとすると、お茶作りだけで1ヶ月半、さらに薫香で1ヶ月以上かかります。作り手の観点で見れば、着香茶は生活のために内職的に作るか、もしくは台湾ジャスミン茶のように計画的に大量に作るかしないととても割に合わないお茶です。
実際、現在売られている着香茶のほとんどは、人工香料をスプレーしたお茶か、花を直接混ぜただけのお茶です。これらは表面上の香りしかなく、旨みと香りの融合はありません。他茶区の茶葉や産地すら不明な輸入茶も好んで使われます。元の品質なんて関係ありません。安ければいいのです。
木柵正欉鐵観音~橘子薫花香の茶湯は、ほんのりオレンジ色を帯びています。時間が経っても濁ったり暗くなったり酸味が現れないのは、茶葉が傷んでない証です。口当たりは東方美人のように柔らかでありながらも、力強い茶質を備えています。舌にザラザラした感じが残らないので20煎飲んでも飲み飽きません。
テイスティングカップの茶湯がとろっと感じるほど、質度が詰まっています。よく後発酵した茶葉はいつまでも旨味が続きます。
翌日まで淹れっぱなしにしても渋くなりません。滋味と香りを出し切るまで何十煎でも淹れてあげてください。季節の変わり目には、木柵正欉鐵観音の陳味と橘子花の香気が一層味わい深く感じられることでしょう。
正しい茶葉と丁寧な薫花作業によって完成しました。ぜひご堪能ください。
お茶のデータ
商品名称 | 木柵正欉鐵観音・橘子薫花香 もくさくせいそうてつかんのん・じーずくんかこう |
生産地 | 台北市文山區指南路三段(猫空茶区) |
茶樹の品種 | 鉄観音 |
摘茶時期 | 2008年11月上旬(2009年Lot) |
茶園の海抜 | 300m |
発酵度 | 重発酵+後発酵 |
烘焙程度 | 重焙火 |
推奨茶器 | 陶土・磁器製の茶壺、蓋碗、テイスティングカップ |
茶葉の分量 | 茶壺・急須・蓋碗 → 5分の1 蓋碗、テイスティングカップ → 底が隠れる程度 |
お湯の温度 | 2煎目以降:98~100℃前後 |
時間の目安 (95℃) |
茶壺 → 50秒 テイスティングカップ → 蓋をして50秒 (2煎目 -10秒、以降 +20秒ずつ) |
木柵正欉鐵観音・橘子薫花香の2つの楽しみ方
茶壺で淹れる → 全ての茶器を充分温めてから、お湯をゆっくり回しかけ、蓋をして蒸らします。茶杯に入っているお湯もかけてあげると、茶器の温度が下がらず、茶葉の開きがよくなります。
蓋碗、テイスティングカップで淹れる → 後発酵を理解するには蓋碗かテイスティングカップがよいでしょう。磁器は香りを引き出すのにぴったりです。しっかり茶器を温めてから淹れてあげましょう。
ワンポイントアドバイス
薫香した茶葉は茶器によって味わいに違いが出やすいです。美味しい淹れ方を探ってみてください。茶壺は高温で硬く焼き締められたものの方が香りが上品に昇ります。