読む台湾茶

茶農 VS 茶商

茶商とは茶荘、つまりバイヤーのことです。

茶農からお茶を買いたいですか?

よく「茶農から直接お茶を買いたいのですが・・」というメールを頂きます。

気持ちは分かりますが、よほどお茶を理解されてる方でない限り、私はお勧めしません。

というのも、はずれが多すぎるのです。有名茶農だって「良いロット」はそうめったに作れないものです。しかも「良いロット」は完成してすぐに優秀なバイヤーに引き取られてしまい、茶農の手元に残ることはまずありません。良品の流通はあっという間です。

「茶商」というポジション

ここで大事なポイントは、茶農はたいてい自分のお茶しか口にしませんが、茶商は色んな茶農のお茶を比較しているという点です。もちろん農家の方々は、茶の栽培にはみな真剣勝負です。それぞれのロットに思い入れがありますし、精魂込めて作った自分のお茶が愛らしく一番美味しいと思うのは当然でしょう。

だからこそ、「茶商」というポジションが重要になります。茶農にとって、茶商はお茶の取引相手というだけでなく、そのロットに客観的な評価をしてくれる存在なのです。オークションで桁違いの高値がつくお茶も、その多くが茶商が買い付けたものです。私の知ってるある茶農は、コンテスト前になると、どのロットを出品するかを信頼のおける茶商に判定してもらっています。

茶商に求められるもの

昨年冬茶の仕入れで、ある茶農を訪ねると「出来たてのお茶がある。これは美味いぞ~」と言って新茶を淹れてくれました。茶農は口に含むなり「あ~うまいねぇ。最高だ~」と絶賛し続けましたが、私は全く仕入れるに値しないと判断して、丁寧にお礼をして席を立ちました。

茶商は手摘みであろうが有機であろうが、ダメなものにはダメと言わなければいけません。いくらコストが掛かっていようが、どんなに深い思い入れがあろうが、茶商は完成品でしか判断しません。

茶商はあくまで客観性を貫きます。

プロ同士の真剣勝負

そういえば先日、あるドキュメンタリー番組で某百貨店の"おせちバイヤー"奮闘記をやってました。一見すると人柄の良さそうなバイヤーなのですが、有名料亭の料理長に対しても譲歩せず、きっぱりと要求を出す姿は印象的でした。

まさにプライドとプライドのぶつかり合い。

でもバイヤーには、これほどまでに豊富な経験に裏打ちされた確とした態度が求められます。思わず自分の仕事と重ね合わせてしまいました。もちろん茶商は、茶農だけでなく茶商からも仕入れます。一度バイヤーのフィルターを通ってるという点では、はずれが少ないのは確かです。

それなら、有名茶荘で買えば安心か。メルマガVol.21から引用します。

老舗茶荘の方が高品質ですか?

日本統治時代から続く老舗茶荘は、莫大な資本があったからこそ繁栄したのです。当時は品質よりも、海外にどれだけ販促ルートを持つかの方が重要でした。つまり、老舗であるかどうかと品質の優劣は関係がありません。

あと、茶農から買えば新鮮だから美味しいという声もよく耳にしますが、お茶は新鮮=美味しいではありません。台湾茶Q&Aなどを参照してください。

ブランドに踊らされる茶商たち

こうして茶商の立ち位置が理解できると、「○○賞×回受賞の△さん」とか「□□茶荘から仕入れ」がキャッチコピーになる日本の中国茶市場って不思議だと思いませんか。茶商には茶商の、茶農には茶農の役割があります。それぞれがプロとして誇りを持っています。

中国茶ブームも一段落。いよいよ茶商の真価が問われる時が来たと、私は感じています。

メルマガ 2006/1/19号より

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